人材不足が問題になっている現在、業務プロセスの効率化がますます重要視されています。特に、20~40代のビジネスマンにとって、デスクワークをより効率的に行う方法は、スキルアップの鍵となります。
そこで今回は、その鍵となる考え方・フレームワークとして「ECRS」を紹介します。この記事では、ECRSの具体例と進め方を徹底解説し、デスクワーク効率化を行う為の、考え方を紹介します。
効率化、職場環境の改善は、自分の市場価値を高める立派なスキルになりえます。その考え方の基礎となるフレームワークですので、効率化・スキルアップに興味がある方はぜひ読み進めてみてください!
はじめに
ECRSは、業務プロセスの最適化やコスト削減を検討するためフレームワークです。ECRSを使用することで、業務の無駄やロスを見つけやすくなり、効率的な改善を考える基礎となります。
この記事では、ECRSについて基礎的な部分から具体的な実施手順までを紹介します。まずECRSの4つの原則を実例を交えて説明をしていきます。そこから注意点やポイント、参考文献も触れながら説明していきます。
ECRSに限らず、フレームワークを使用して改善案を見つける作業は、発想の道筋が見えることが大きなメリットの一つです。改善をスキルにする上で、考えの道筋を理解して他の環境でも再現できることが重要となります。
この記事を通して、フレームワークを使って根拠のある発想を行い、業務改善をスキルに変える手助けになれば幸いです。
ECRSとは?どういった歴史があるの?
改めてECRSは、現場改善の原則となる考え方、つまりフレームワークです。このECRSは「イクルス」と呼ばれ、Eは排除(Elimination)、Cは結合(Combination)、Rは入替え(Replacement)、Sは簡素化(Simplification)を意味します。
この手法の原則は、作業研究の先駆者である「フランク・バンカー・ギルブレス」によって開発されたといわれています。彼はフレデリック・テイラーと並び「科学的管理技法の創始者」とされている人物です。
作業研究の考え方を背景に、ECRSの考え方は主に製造現場で使われてきましたが、現在ではデスクワークをはじめとするさまざまな業務に応用されています。
ムダやロスを見つけて効率的に改善する手法として、製造業以外の業務でも、非効率性を見直す考え方として活用されています。
ECRSの4原則とその事例
①「E」:排除
ECRSの最初の原則は「E(Elimination)」排除です。業務の改善を考える際、最初に検討すべき視点がここです。何故なら、作業自体を無くしてしまう排除が、他のどの方法より簡単で効果が大きいからです。
製造業においては、検査や測定などの一見必須と思われる作業でも、排除できることがあります。これは間接業務においても同じで、報告書の無駄な作成や効果の少ない会議の排除(廃止)などは典型的な排除の例です。
まず排除しても問題のない業務を見つけ出し、なぜその業務があるのか、理由や目的を明確に洗い出します。理由や目的が不明確な業務は、慣例に過ぎない可能性が高いです。
たとえば、誰も確認しない報告書の作成や、不要な検査項目を排除することで、工数の削減が実現します。不要なものや無駄なものを取り除くことで、業務の効率と品質を向上させるのが排除の原則です。
実際の成功例としては、トヨタのカンバン方式や、サービスでは、無印良品のデザインを排除したシンプルなパッケージデザインなどがあります。これらの事例は、排除の原則を活用した典型例です。
②「C」:結合と分離
排除の検討が終わったら、次に考えるべきは「C(Combination)」、結合と分離です。似た業務を統合することで、必要な設備やスキルを減らすことができます。一方、異なる属性を持つ業務を分離することで、業務のスムーズな遂行が期待できます。
例えば、複数の測定機器を使用していた検査を1台の装置で行うように改善することや、複数のチェックシートを1枚にまとめることで、作業を結合させる業務改善を行うことができます。逆に、1台で行っていた作業を人数を増やして行えるように作業を分割することでも、業務改善が図れる場合があります。このように、作業を統合・分離することで、業務改善を図る手法が、「C」になります。
実際のサービスとしての成功例としては、Apple製品(iTunesとiPodなど)やAmazonの1クリック注文等が、この原則を活用した事例です。
③「R」:入れ替えと代替え
「E」(排除)と「C」(結合と分離)が終わった次の原則は「R(Replacement)」、入れ替えと代替えです。業務の順序や場所を変更することで、効率を向上させる可能性を検討します。入れ替えや代替は、生産サイクルを短期的に短縮しなくても、長期的な視点で見れば業務改善とコスト削減に繋がることが多い考え方です。
たとえば、工程の流れを左から右から左に変えて、作業者の手の動きに合わせてスムーズにすることがあります。また、頻繁に取り出す部品や工具を、取り出しやすい位置に配置し直すことで、作業を簡略化する改善も該当します。
作業の順序や場所、担当者を変更し、業務の小規模な再設計等、小規模な改善であるため、変更の難しさは低いです。
さらに、「R」(入れ替えと代替え)は既存の要素を代替えすることで業務の価値や魅力を高める原則でもあります。レンタルビデオを配信で代替したNetflixの動画配信サービスや、スターバックスのカスタマイズ可能なコーヒーなども、この考え方を活用したサービスとなります。
④「S」:簡素化
ECRSの最後の原則は「S(Simplification)」、簡素化です。業務をできるだけ単純な方法に変え、自動化やパターン化などを検討します。簡素化により、誰でも同じ品質の作業が可能となり、属人化を防ぐことができます。
業務の実態を測定し、動作、要素、作業、工程を単純化し、理想的なプロセスを設計して導入する活動で、コストや労力がかかることも多いですが、ECRで変えられなかったサービスの内容を、大きく変えずに改善が行えることがメリットです。
例えば、シートのコピーや移動を一つのボタンで行えるVBAの作成も簡素化の一つです。RPAの導入などで画面の自動化を行い、実行するだけで作業を完了できるようにすることも、簡素化の事例になります。
サービス事例としては、シンプルな検索エンジンを作ったGoogleや組み立て式家具のIKEAなどがあげられます。
※VBAについてはこちら
ECRSの実施手順
ECRSを実施する時の主な手順は、以下通りです。
1. 目的や課題の明確化
まず何を改善し、どの課題に対処するのかを明確に定義します。ネックになっている製品、作業の問題点を大枠でとらえ、目標を設定します。
2. 現状の分析
現在の業務プロセスや問題点を詳細に分析し、ムダやロスを特定します。製品の作成工程、資料作成の手順などを細分化し、どこでどのくらい時間がかかっているかを分析します。
ECRSの検討を行う前段階である、この現状の分析が最も重要と言っても過言ではありません。改善における重要なフローが、この現状分析となります。
3. ECRSの4原則に基づく改善案の考案
4つの原則(排除、結合と分離、入れ替えと代替え、簡素化)に従って、改善案を練ります。
ECRSの順に効果が高く、納入コストが低い内容となっているので、排除から順番に、それぞれの工程・作業が当てはめられないかを検討していきます。
ここでは実際にできるかを考えず、案をたくさん出しておくようにしましょう。
4. 改善案の評価と優先順位付け
考案した改善案を評価し、実行の優先順位をつけます。
先ほどの改善案の考案で出した案を、実際にできるかどうかを踏まえて検討していきます。
5. 改善案の実行と効果測定
優先順位がつけられた改善案を実行し、その効果を定量的または定性的に測定します。
6. 改善案の改善と定着
改善案を継続的に改良し、業務プロセスに定着させます。さらには定期的に目的や課題も更新していき、ECRSの改善活動自体を定着化させることも重要です。
これらのステップを追うことで、効率的な業務プロセスの確立とコスト削減を実現できます。
ECRS実践時の注意点やコツ
ECRSを実践する際には、以下の注意点とコツがあります。
社内プロジェクトとして行う
ECRSの実践にはチームワークと関係者との協力が不可欠です。関係者や利用者から意見やフィードバックを積極的に収集し、共有し、実施に反映しましょう。
これはECRSに限りませんが、改善活動は連携・協力ができないと効果が薄れてしまいます。周りとしっかり連携・共有を行い、持続的な改善を実現しましょう
他の手法との組み合わせることで効果UP
ECRSは、他の改善手法と組み合わせることで効果が高まります。5W1HやPDCAサイクル等と組み合わせて活用することで、より深く効率改善の検討を行うことができます。
効率化学習に有効な参考書
ECRSを含めた、効率化学習を深める中為に、次のような参考書がおすすめです。
①業務改善の問題地図
業務改善のとっかかりとして、読みやすくおすすめの1冊です。
ECRS以外にも様々な手法が紹介されている為、業務改善を真剣に取り組むうえで、まず初めに読んでみてほしい1冊です。

②フレームワーク使いこなしブック
そもそもフレームワークとは何で、どういう効果・メリットがあるのかが一冊でわかりやすく紹介されている本です。
ストーリー性のある紹介の中で、実例も交えて紹介されているので、読み物としても読みやすく面白い一冊です。

③最短ルートで最大の成果を残す「5つの習慣」
この本では「デキる」ビジネスマンが持っている、成功する為の5つの思考習慣が紹介されています。その習慣の一つが今回紹介した「ECRS」です。
ちなみにこの本は、Kindle Unlimitedの読み放題に組み込まれている本になっています。初月は無料で読むこともできる為、今からビジネス書を定期的に読んでみようと考えている方は、併せて検討してみてください。


おわりに
今回はECRSについて紹介しました。現状をしっかり分析し、ムダを排除し、業務を簡素化し、業務を結合・分離し、作業の入れ替えと代替えを考えてみましょう。どこかに改善の余地があるはずです。
ECRSの原則を実践できれば、業務環境を効率化し、改善ができるだけでなく、改善自体が自分の市場価値を高めるスキルになっていくことは、間違いありません。
皆様も改善で、スキルアップを図っていきましょう!
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