大きく仕込む前に、この会社に潜むリスクを徹底的に洗い出したい…
粉飾や過度な依存といった「危険シグナル」を効率的に検出したい!
個人投資家が大きな損失を被るパターンの多くは、業績悪化や粉飾といった「事前に気づけたはずのリスク」を見落としていたケースです。
こうしたシグナルは、実は一次情報を丁寧に読み込めば多くの場合事前に見えています。問題は、5期分の有報や決算短信を横断して「不自然な膨らみ」をチェックする作業に、人間だと膨大な手間がかかることです。
特に粉飾の兆候のような「売掛金や棚卸資産が売上の伸びを超えていないか」を複数期で突き合わせるような分析は、本業のあるサラリーマン投資家にはなかなか時間が取れませんよね。
ここで力を発揮するのが、Googleの提供するNotebookLMです。一次情報を投入してプロンプトを投げるだけで、人間が見落としがちな「悪い兆候」を能動的に洗い出してくれます。
この記事では、個別株のリスク分析をNotebookLMで効率化する具体的な手順を、コピペで使える3つのプロンプト付きで紹介します。ぜひ本玉を入れる前の「最後の関門」として活用してみてください!
なお、この記事で3つのプロンプトを紹介していますが、NotebookLMによる個別株分析のプロンプトをまとめた書籍を販売しています。
各分析テーマごとにコピペで使えるプロンプトがまとまっているので、本記事を実践してさらに踏み込みたくなった方は、あわせてチェックしてみてください。なお、Kindle Unlimitedで無料で読めますので、併せて確認してみてください!
目次
【結論】コピペで使える3つのリスク分析プロンプト
やることは「NotebookLMに資料を読み込ませ、用意したプロンプトを貼る」だけです。
難しい設定もコード知識も不要です。まずは全体の流れと推奨ソースを押さえ、あとは下のプロンプトをコピペして使ってみてください。
理由や読み解き方、詳しい運用手順は後の章で解説します。
まずは全体像(3ステップ)
使う流れは、以下3ステップです(各手順の詳細は後の章で解説します)。
- ステップ1:調べたい銘柄ごとに、NotebookLMで専用ノートブックを作成する
- ステップ2:有報・決算短信を直近3〜5期分まとめて読み込ませる(横断分析のため複数期が必須)
- ステップ3:下記のプロンプトを①→③の順番でコピペして質問する
推奨ソース(NotebookLMに入れる資料)
リスク分析の精度は、複数期の資料を入れているかでほぼ決まります。「不自然な膨らみ」を検出するには時系列の比較が不可欠なので、必ず複数期分を入れましょう。
- 有価証券報告書(直近3〜5期分)
- 決算短信(直近3〜5期分)
- 監査報告書(有報内に記載)
- 決算説明会資料(直近1〜2回分)
- 適時開示資料(訴訟・行政処分関連があれば)
プロンプト①|財務リスク——粉飾・利益操作の兆候を探る
明らかな粉飾でなくても、売上の前倒し計上や費用の繰り延べ、在庫の過大評価といった「利益のかさ上げ」は、複数期を横断して見ないと気づきにくいものです。典型的な粉飾パターンを網羅的にチェックさせるプロンプトです。
この会社の財務諸表について、利益操作や粉飾につながりうる兆候の有無を以下の観点でチェックしてください。 1. 売上高と利益の変動が自然か(売上は伸びていないのに利益だけ急増していないか) 2. 売掛金の増加ペースが売上の伸びを上回っていないか 3. 棚卸資産の増加ペースが売上の伸びを上回っていないか 4. 営業キャッシュフローと純利益の乖離が拡大していないか 5. のれん・無形資産が不自然に膨らんでいないか 6. 関連当事者取引や、子会社・関連会社との取引で不自然なものはないか 7. 会計方針の変更があれば、その内容と影響額 該当する兆候がない場合も「特段の懸念は見られない」と明示してください。 懸念がある場合は、根拠となる数値や記載箇所も示してください。
プロンプト②|顧客集中・地域依存のリスクを評価する
事業のどこかに過度な「依存」があると、そこが崩れた瞬間に業績全体が揺らぎます。平常時には強みになっていた構造が、ひとたび環境が変わると致命的な弱点に変わる——この見落としを防ぐためのプロンプトです。
この会社の依存リスクについて以下の観点で評価してください。 1. 特定顧客への売上集中(上位顧客の売上構成比と、その推移) 2. 特定地域への売上集中(特に中国・米国など、地政学リスクの高い地域) 3. 特定の原材料・部材への調達集中(サプライヤー集中も含む) 4. 特定の販売チャネル・代理店への依存 5. 特定の技術ライセンスや特許への依存 それぞれについて、リスクの大きさと、会社側の対応策(記載があれば)も整理してください。 依存が崩れた場合の業績への影響シナリオも併せて考察してください。
プロンプト③|監査・コンプライアンスリスクを確認する
監査法人の交代頻度や訴訟の状況には、企業の「正直さ」を映し出すシグナルが含まれています。財務面のリスクと併せて確認することで、コンプライアンス姿勢が立体的に見えてきます。
この会社の監査・コンプライアンス関連のリスクについて以下を整理してください。 1. 現在の監査法人と、過去5〜10年で監査法人の交代があったか 2. 監査意見の内容(無限定適正意見か、限定付き適正意見か、注記の有無) 3. 監査報告書で言及されている「監査上の主要な検討事項(KAM)」の内容 4. 進行中の訴訟・係争事案(金額・内容・進捗) 5. 過去に発生した不祥事・行政処分・課徴金などの履歴 6. 内部統制報告書の評価結果(重要な不備があれば抽出) 懸念があれば、その重要度(業績や信頼性への影響度)も併せて評価してください。
実行順序の考え方
3つのプロンプトは、上から順に投げるのがおすすめです。
①財務面(数字の不自然さ) → ②ビジネス面(依存構造) → ③監査面(正直さ)、という流れで投げると、株価下落につながる主要リスクを網羅的にチェックできます。
次の章からは、なぜこのやり方がリスク分析でここまで効くのか、そして各プロンプトの結果をどう読めば「危ない兆候」を見抜けるのかを順番に解説していきます。
なぜNotebookLMがリスク分析で力を発揮するのか
「リスク分析ならChatGPTでも答えてくれるのでは?」と思うかもしれません。
しかし粉飾や依存の兆候を一次情報から拾い上げる用途では、NotebookLMがダントツに向いています。理由は3つです。
複数期を横断して「不自然な膨らみ」を検出できる
粉飾や利益操作の典型パターンは、単年の数字を眺めていても見抜けません。
「売掛金が売上の伸びを超えて膨らんでいる」「棚卸資産が前年比で異常に増えている」「営業CFと純利益のズレが拡大している」——こうした兆候は、複数期を横並びにして初めて浮かび上がります。
人間がこれを手作業でやろうとすると、5期分の有報をExcelに転記して比較表を作るところからスタートしないといけません。NotebookLMに有報を3〜5期分まとめて読み込ませれば、こうした横断比較を数分で済ませられます。リスク分析でNotebookLMが最も力を発揮するのが、まさにこの場面です。
「悪い兆候を能動的に探させる」設計が効く
個人投資家が陥りがちなのが、確証バイアスです。気になっている銘柄に対しては、無意識のうちにポジティブな情報ばかり目につくようになり、ネガティブなシグナルを軽視しがちです。
結論で紹介したプロンプトは、いずれも「悪い兆候を能動的に探させる」設計になっています。「粉飾につながる兆候を全部チェックして」「依存リスクをすべて洗い出して」と明示的に指示することで、自分の楽観バイアスを補正しながらリスクを評価できます。
これは「自分で読んで気づこうとする」やり方とは決定的に違うアプローチです。
「懸念なし」も明示させてノイズを防ぐ
リスクを能動的に探させると、今度は逆に「無理に問題をでっち上げてしまう」という別の問題が出てきます。
プロンプト①で「該当する兆候がない場合も『特段の懸念は見られない』と明示してください」という一文を入れているのは、まさにこのノイズを防ぐためです。
AIに「問題がなければそう書いて」と明示しておかないと、リスクを必ず1つは見つけようとして無理な指摘をしてくることがあります。この一文があるだけで、出力の信頼性が大きく上がります。
各プロンプトの読み解き方(どこを見れば危ないか)
プロンプトを投げて返ってきた回答を、ただ眺めるだけでは不十分です。
どこに注目して読めば「危ないサイン」を見抜けるのか、3つのプロンプトそれぞれで押さえておきたいポイントを解説します。
売掛金・棚卸資産・営業CFのズレが示すもの
プロンプト①で最も注目すべきは、「売上の伸びを売掛金や棚卸資産が上回っていないか」という点です。
売掛金が売上以上のペースで増えているなら、回収できていない売上を計上している可能性があります。棚卸資産が異常に膨らんでいるなら、売れ残りを資産として抱え込んでいる可能性があります。
さらに「営業CFと純利益の乖離」も要注意のサインです。純利益は出ているのに営業CFがマイナスや極端に小さい場合、利益が実態のキャッシュを伴っていないことを意味します。過去の不正会計事案でも繰り返し見られてきた共通項なので、ここに違和感があれば慎重に判断すべきです。
のれん・関連当事者取引の不自然さ
M&Aを多用している企業では、のれんの過大計上が大きなリスクになります。買収価格が実態と比べて高すぎると、将来の減損リスクとして待ち構えることになります。
また、子会社や関連会社との取引額が不自然に大きい、取引条件が市場価格から乖離している、といった関連当事者取引の歪みも警戒サインです。グループ間で売上を立てて利益をかさ上げするような手法は、過去の粉飾事案でも頻出のパターンです。
プロンプト①の回答に「のれん」や「関連当事者取引」の項目で気になる記述があれば、有報の該当箇所を実際に確認しに行く価値があります。
監査法人の交代・KAMが示すもの
プロンプト③で確認すべき重要ポイントが、監査法人の交代頻度とKAM(監査上の主要な検討事項)の内容です。
監査法人が短期間で交代している場合、監査人と経営側で会計処理を巡る対立があった可能性があります。また、KAMで「のれんの評価」「収益認識」「貸倒引当金」といった項目が挙げられている場合、監査人自身が「ここは要注意」と認識している領域を示しています。
さらに、過去に行政処分や課徴金の履歴がある企業は、再発リスクの観点でも警戒が必要です。表面的な業績がよく見えていても、コンプライアンス姿勢に問題がある企業は、いつ同じ過ちを繰り返すか分かりません。
リスク分析を「最後の関門」にする実践手順
結論のプロンプトと読み解き方を押さえたら、あとはそれを「買いを決断する前のルーティン」として組み込むだけです。
ここでは、実際にどのタイミングでどう使うかを解説します。
買いを決断する前のスクリーニングとして回す
リスク分析の3プロンプトは、本玉を入れる前の「最後の関門」として位置づけるのがおすすめです。
具体的なフローはこうなります。まず気になる銘柄を打診買いし、企業理解・業績分析・競合比較といった調査を行ってから、最後にこの3プロンプトで致命的なリスクがないかをチェックします。
「ここまで調べて買いたい」と思った銘柄でも、ここで重大な懸念が見つかれば、本格的なポジション積み増しは見送るべきです。3つのプロンプトを通して大きな問題が見つからなければ、安心してポジションを大きくできます。
重大な懸念が見つかったときの判断
では、何らかのリスクシグナルが見つかった場合はどうするか。判断の選択肢は3つあります。
- 完全に見送る:粉飾の典型パターンに複数該当する、監査法人の不自然な交代があるなど、信頼性そのものに疑義がある場合
- ポジションサイズを抑える:顧客集中などの依存リスクが顕著だが、ビジネス自体は魅力的な場合、想定より小さいサイズで保有する
- 定期モニタリング対象にする:すぐに致命的ではないが注視すべきリスクがある場合、決算ごとに同じプロンプトで再チェックする運用にする
一つでも重大な懸念が見つかれば、無理にエントリーしない判断ができるようになります。「リスクを能動的に探した結果、見つからなかった」という確信が持てる銘柄だけにフルポジションを取る、という規律につながります。
まとめ|リスク探索をAIで仕組み化する
大きな損失の多くは、「事前に気づけたはずのリスク」の見落としから始まります。シグナルは一次情報に出ているのに、複数期を横断して読む時間が取れず見過ごされる——これが個人投資家の構造的な弱点でした。
NotebookLMに一次情報を投入し、この記事で紹介した3つのプロンプトを貼るだけで、その弱点は「数分のリスクスクリーニング」に変わります。本玉を入れる前の「最後の関門」として、ぜひルーティンに組み込んでみてください。
なお、業種特性に合わせてプロンプトを調整するとさらに精度が上がります。M&Aを多用している企業ならプロンプト①に「のれんの内訳と、各買収案件の現状」を追加で聞き、中国売上比率が高い企業ならプロンプト②に「中国事業に関する地政学リスク・規制リスク」を独立して深掘りさせる、といった具合です。
銘柄1社のリスク分析なら、有報3〜5期分・短信・監査報告書を入れてもソース数は10〜20個程度に収まり、無料プランの範囲で十分対応できます。まずは無料プランで、気になる1銘柄を試してみるのがおすすめです。
この記事では「個別株のリスク分析」に絞って3つのプロンプトを紹介しましたが、企業の調査・業績分析・マクロ環境の読み解き・保有後の継続評価まで含めた、NotebookLMによる個別株分析を体系的にまとめた書籍を販売しています。
各分析テーマごとにコピペで使えるプロンプトがまとまっているので、本記事を実践してさらに踏み込みたくなった方は、あわせてチェックしてみてください。なお、Kindle Unlimitedで無料で読めますので、併せて確認してみてください!



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